特養に入れない・待機が長いときの現実的な選択肢|つなぎと申込みのコツ
先に、要点だけ
- 特養の新規入所は原則要介護3以上。要介護1・2は、認知症や介護者不在などのやむを得ない事由がある場合に限り特例入所が検討される
- 特養は先着順ではなく、本人の状態と介護者側の事情を点数化した優先度評価で入所順が決まる。複数施設への同時申込みができる
- 待機中は空白にせず、老健・ショートステイのロング利用・在宅サービスの組み合わせでつなぐ。ケアマネジャーが窓口になる
- 全国の入所申込者は令和7年4月時点で約22.5万人(要介護3以上は約20.6万人)。地域差が大きく、待機期間は一律ではない
この記事の目次
要介護3が出て特養に申し込んだのに「今は何十人待ちです」と言われ、それまでどう乗り切ればいいのか、誰にも道筋を示してもらえない——。特別養護老人ホーム(特養)の入口で立ち止まる家族は、決して少なくありません。
先に結論をお伝えします。特養は先着順ではなく、本人の状態と介護する家族の事情を点数化した優先度評価で入所順が決まります。だから「複数施設に申し込む」「介護者側の状況も正しく伝える」「待機中は在宅サービスや老健でつなぐ」の3つを同時に進めるのが現実的です。この記事では、その具体的な進め方を、はじめての人向けに順を追って説明します。
そもそも特養に入れる条件は?(原則要介護3以上と特例入所)
特養の新規入所は、原則として要介護3以上の人が対象です(厚生労働省 介護サービス情報公表システム)。要支援や要介護1・2では、通常は申込みの土俵に上がれません。
ただし例外があります。要介護1・2でも、次のような「やむを得ない事由」がある場合は、特例入所として入所が検討されます(厚生労働省の指針)。
✅ 特例入所が検討される主なケース(要介護1・2)
- 認知症により、日常生活に支障をきたす症状や意思疎通の困難さが頻繁に見られる
- 知的障害・精神障害などを伴い、同様の状態が頻繁に見られる
- 家族などによる深刻な虐待が疑われ、心身の安全・安心の確保が難しい
- 単身世帯、または同居家族が高齢・病弱などで支援が期待できず、地域の介護サービスも不十分
💡 該当すると思ったら受付は拒否されない
申込者側が「特例入所の要件に当てはまる」と申し立てた場合、施設はその申込みを受け付けないという対応はできないことになっています(厚生労働省の指針)。要介護1・2だからと最初からあきらめず、まずはケアマネジャーか施設に相談してみてください。
特養は先着順ではない:申込みと優先度評価の仕組み
ここが最も誤解されやすいところです。特養は申し込んだ順に入れるのではなく、優先度の高い人から入所が決まります。多くの自治体・施設では、次のような要素を点数化して順位を付けています。
👤 本人の状態で見られる点
- 要介護度(重いほど優先されやすい)
- 認知症の症状の程度
- 医療的ケアの必要性
- 在宅での生活の困難さ
👪 介護する側で見られる点
- 同居して介護できる家族がいるか
- 介護者の就労・健康状態
- 介護者が高齢(老老介護)か
- 住まいの環境・地域の支援の状況
重要なのは、評価されるのは本人の状態だけではなく、介護する家族の状況も対象になるという点です。「介護者が仕事を続けられない」「介護者自身が高齢で体調を崩している」といった事情は、優先度を判断する正当な材料です。
特養は複数の施設に同時に申し込めるのも大きな特徴です。1か所に絞る必要はありません。エリアを広げて数か所に出しておくと、どこかで順番が来る可能性が高まります。
待機が長引くときの3つの正しい伝え方
「順番待ちだから待つしかない」と受け身になる必要はありません。優先度は状況の変化で見直されます。次の点を、事実として正確に伝えてください(誇張は不要です。ありのままの困りごとで十分です)。
- 在宅の限界を具体的に:「夜間に何度も起きて目が離せない」「火の始末が危うい」など、頻度とエピソードで
- 介護者側の事情を隠さない:介護者の就労・持病・年齢、同居家族が他にいないことなど
- 状態が変わったら申告する:認定区分が上がった、認知症が進んだ、介護者が入院した——変化はそのつど施設と自治体に伝える
⚠️ 「迷惑をかけたくない」と控えめに伝えてしまう
遠慮して困りごとを小さく伝えると、優先度の評価にも実態が反映されません。介護者自身の生活や健康が限界に近いことは、隠すべき弱みではなく、正しく評価されるべき事情です。事実を具体的に伝えることは、わがままではありません。しんどさを一人で抱えていないかは、介護に疲れたと感じたときの記事もあわせて読んでみてください。
待機中のつなぎ:老健・ショートステイ・在宅の組み合わせ
特養が空くまでの期間を空白にせず、別のサービスで暮らしを支えます。本人の状態と家族の負担に応じて、次を組み合わせます。
老健(介護老人保健施設)は在宅復帰を目指すリハビリ施設で終身の住まいではありませんが、退院直後や在宅が難しい時期の受け皿として、特養の待機中に使われることがよくあります。ショートステイ(短期入所)は数日〜数週間単位で利用でき、長めに使うことで家族の負担を軽くできます。どれをどう組み合わせるかは、担当のケアマネジャーが本人の状態に合わせて調整してくれます。
💡 つなぎの司令塔はケアマネジャー
複数の特養への申込み、待機中のショートステイや老健の手配、在宅サービスの調整は、ばらばらに動くと家族が消耗します。担当のケアマネジャーに「特養が空くまでの全体像を一緒に組みたい」と伝えると、窓口が一本化されて動きやすくなります。
なお、特養の申込者数は減少傾向にあり、令和7年4月時点で全国の入所申込者は約22.5万人(うち要介護3以上が約20.6万人)と、3年前より減っています(厚生労働省)。ただしこれは全国平均で、都市部と地方、施設ごとの差が大きい数字です。待機期間は一律ではないため、「自分の地域ではどうか」をケアマネジャーや地域包括支援センターに確認するのが確実です。
制度の運用や優先度の評価方法は自治体・施設によって差があります(2026年時点)。施設の種類全体を整理したい場合は老人ホームの種類一覧の記事、待機中に使うショートステイの詳しい使い方はショートステイの使い方の記事もあわせて読んでみてください。
よくある質問
特養は申し込んだ順に入れるのですか?
先着順ではありません。多くの自治体・施設では、本人の要介護度や在宅生活の困難さに加え、介護する家族の状況(同居家族の有無・就労・健康状態など)も点数化し、優先度の高い人から入所を決めています。そのため、後から申し込んだ人が先に入所することもあります。申込みの順番より、置かれている状況を正確に伝えることが大切です。
要介護1・2でも特養に申し込めますか?
原則は要介護3以上ですが、要介護1・2でも特例入所の対象になる場合があります。認知症で日常生活に支障がある、家族による深刻な虐待が疑われる、単身または家族が高齢・病弱で在宅の支援が期待できない、などのやむを得ない事由が示されたケースです。該当すると考える場合、施設は申込みの受付を拒否できないことになっています(厚生労働省の指針)。まずはケアマネジャーか施設に相談してください。
特養の待機期間はどのくらいですか?
地域や施設、本人の優先度によって大きく異なり、一律には言えません。都市部の人気施設では長くなる傾向がある一方、申込者数は近年減少しており(令和7年時点で全国約22.5万人)、地域によっては比較的早く入れる施設もあります。複数の施設に申し込み、ケアマネジャーに地域の実情を聞くのが確実です。
特養を待っている間は、どこで過ごせばいいですか?
在宅で過ごしながら訪問介護やデイサービスを組み合わせる、老健に入所する、ショートステイを長めに利用する、といった選択肢があります。どれが向くかは本人の状態と家族の負担によります。担当のケアマネジャーに「特養が空くまでの間の過ごし方を一緒に考えたい」と相談すると、状況に合わせて手配してもらえます。