認定調査の聞き取りで、調査員と家族がテーブルを挟んで資料を確認しているイメージ

認定調査の日だけ親が元気に振る舞う|実態より軽い判定を防ぐ伝え方と対策

公開: 2026年7月18日 読了目安 約7分

先に、要点だけ

  • 調査の日だけ元気に振る舞うのは珍しくない反応。本人にうそのつもりはなく、責めたり恥じたりしなくていい
  • 国の認定調査員テキストは、当日の様子が日頃と違うと考えられる場合、日頃の状況を聞き取って選択すると定めている(多くの項目でおおむね過去1週間のより頻回な状況)
  • 家族の対策は、頻度つき(週◯回・1日◯回)の日頃の様子メモを当日調査員に渡すこと。本人の前で言いにくい内容は、玄関先や電話など個別の聞き取りを相談できる
  • 調査票の特記事項は介護認定審査会で参照される。家族が伝えた具体的なエピソードがその材料になる
  • 実態より軽い結果が出ても、市区町村への区分変更申請などやり直す道がある
この記事の目次
  1. 認定調査の日だけ元気に振る舞うのは、よくあること
  2. なぜ「できます」と言ってしまう?本人にうそのつもりはない
  3. 対策の全体像|普段の様子を「別ルート」で届ける
  4. 事前の準備は2つ|日頃の様子メモと主治医への共有
  5. 当日の立ち回り|本人の前で「できません」と言わなくていい
  6. 実態より軽く出てしまったときのリカバリー

家の中では壁づたいにやっと歩いているのに、調査員の前ではすっと立ち上がって「自分でできます」——。認定調査を控えた家族が最も心配する場面であり、実際にとてもよく起きることです。

結論から言うと、調査の日だけ元気に振る舞うのはよくある自然な反応で、親を責める必要も恥じる必要もありません。家族の対策は、普段の様子を本人の受け答えとは別のルートで調査員に届けることです。この記事はその1点に絞って、なぜ起きるのか、事前と当日の具体策、軽く出てしまったあとの動き方を解説します。当日の流れや聞かれる内容の全体像、メモの詳しい書き方は認定調査では何を聞かれる?にまとめています。

認定調査の日だけ元気に振る舞うのは、よくあること

まず知っておいてほしいのは、この現象は特別なことではなく、制度の側もある程度織り込み済みだという事実です。

来客の前で背筋を伸ばし、身なりを整えて受け答えをする——親の世代にとって、それは長年の礼儀であり習慣です。調査員という初対面の相手を前にすれば、いつもより気を張るのはむしろ自然な反応だと言えます。

制度側の手当てもあります。国の認定調査員テキスト(令和6年4月改訂)には、緊張などで当日の様子が日頃と違うと考えられる場合、調査員は日頃の状況を聞き取り、より頻回にみられる状況で選択する、と定められています(多くの項目でおおむね過去1週間が目安)。つまり、当日しゃんとしていたら終わり、という仕組みではありません。ただし、その日頃の状況を調査員に届ける役は、いちばん近くで見ている家族が担う必要があります。

なぜ「できます」と言ってしまう?本人にうそのつもりはない

対策の前に背景を知っておくと、当日の気持ちがずっと楽になります。本人は調査を妨害しようとしているわけではありません。

  • お客さんの前のよそいき: 初対面の来客に弱った姿を見せないのが、本人なりの礼儀でありプライド。
  • 心配をかけたくない遠慮: 「できない」と認めれば家族に負担をかける、と感じて困っていないことにしてしまう。
  • 本人の認識では本当にできる: 時間がかかっても最終的にやり遂げられるなら、本人の感覚ではできるうち。認知症のある人では、初対面の相手の前でしっかり受け答えをする「取り繕い」がみられる場合があるとされています。

どれも、うそをついているわけではありません。だから、事前に言い含めたり、その場で問い詰めたりする必要はありません。家族の仕事は本人を変えることではなく、伝わるルートを増やすことです。

対策の全体像|普段の様子を「別ルート」で届ける

やることはシンプルで、次の4ステップです。

1
【事前】日頃の様子メモを作る困りごとを具体的なエピソードと頻度(週◯回・1日◯回)で書く。
2
【事前】主治医にも普段の様子を伝える審査のもう1つの柱である主治医意見書に実態を反映してもらう。
3
【当日】家族が立ち会い、メモを渡す本人の答えは否定せず、普段の事実を静かに補足する。
4
【当日】言いにくいことは個別に伝える玄関先・別室・後からの電話など、本人のいない場での聞き取りを相談する。

ポイントは、本人の受け答えを直そうとするのではなく、家族からの情報という別ルートを最初から設計しておくことです。

事前の準備は2つ|日頃の様子メモと主治医への共有

事前準備の柱はメモです。コツは、形容詞ではなく頻度と具体例で書くこと。「歩くのが大変」ではなく「週2回ほど廊下でふらつき、先月は転倒が1回」と書きます。排せつの失敗や火の消し忘れ、お金の管理のような、本人の前では口にしにくい内容ほどメモに落としてください。項目立てと文例は、冒頭で紹介した記事で詳しく解説しています。

もう1つが主治医です。要介護認定は、認定調査の結果と主治医意見書の2本柱で審査されます。診察室でも本人はしっかり受け答えしがちなので、受診に付き添って普段の様子を伝えるか、同じメモを渡しておくと、意見書に実態が反映されやすくなります。伝え方は主治医意見書の頼み方にまとめています。

✅ 調査日までの段取りチェックリスト

  • 日頃の様子メモを用意した(エピソードは週◯回・1日◯回の頻度つきで)
  • 本人の前では言いにくい内容ほどメモに書いた
  • 家族が立ち会える日程で調査日を調整した
  • 主治医に普段の様子を伝えた(受診時にメモを渡すでも可)
  • 本人のいない場で伝えたいことがある旨を、市区町村の介護保険窓口か調査員に事前に相談した

当日の立ち回り|本人の前で「できません」と言わなくていい

当日の家族の役割は、審判ではなく通訳です。本人の答えを面と向かって否定する必要はありません。伝えるルートは3つあります。

伝え方やり方向いている場面
メモを手渡すあいさつのときに「日頃の様子をまとめました」と1枚渡す言いにくい内容が多い・口頭で説明する自信がない
その場でひと言補足本人の答えを否定せず「普段は◯◯なんです」と事実だけ足す本人が気を悪くしにくい話題
個別の聞き取りを相談玄関先・別室・後からの電話で話せるか調査員に相談する排せつの失敗など本人の尊厳に関わる内容

個別の聞き取りは、わがままなお願いではありません。認定調査員テキストでも、本人と介護者それぞれから個別に聞き取る時間を設ける工夫が調査員に示されています。また、西宮市のように、調査の際はできるだけ家族が立ち会うよう公式サイトで呼びかけている自治体もあります。遠慮せず相談してください。

💡 目指すのは「特記事項に残してもらう」こと

調査票は、選択式の基本調査と、文章で書く特記事項の2部構成です。特記事項は介護認定審査会で、基本調査の選択の確認や介護の手間の評価に使われます。家族が伝えた具体的なエピソードは、この特記事項の材料になります。

実態より軽く出てしまったときのリカバリー

備えていても、結果が実態より軽く出ることはあります。そのときに家族が自分を責めないための道筋を、最後に押さえておきます。

⚠️ 「当日だけシャキッ→軽い判定→家族が落ち込む」は頻出

調査員の前でだけ元気に振る舞い、実態より軽い結果が出て、伝えきれなかった家族が自分を責める——という流れは、認定調査でいちばんよくあるつまずきです。家族のせいでも、張り切った本人のせいでもありません。

結果に納得できない場合は、市区町村に区分変更申請を出して、調査からやり直す方法があります(結果は原則30日以内)。2回目の調査では、この記事の別ルート作戦を最初から使えます。手続きの選び方は結果に納得できないときの区分変更申請と審査請求で解説しています。

なお、立ち会い日程の調整やメモの事前送付、電話での補足聞き取りといった運用の細部は、自治体により異なります(2026年時点)。申請からの全体像は要介護認定の申請方法と流れで確認しつつ、迷ったら親が住む市区町村の介護保険窓口に「本人の前では話しにくい様子を別の形で伝えたい」と相談してみてください。

よくある質問

親に「調査では正直に答えてね」と頼んでおけば大丈夫ですか?

調査の目的を事前に話しておくこと自体は有効ですが、それでも当日は張り切ってしまう人が少なくありません。本人の受け答えだけに任せず、家族が立ち会って日頃の様子をメモや口頭で別に伝える準備をしておくと安心です。本人を問い詰める必要はありません。

調査員の前で親の答えを訂正すると、けんかにならないか心配です。

その場で言い合う必要はありません。本人の話はさえぎらず、日頃の様子を書いたメモを調査員に渡す、調査の前後に玄関先で補足する、後から電話で伝えられるか相談する、といった方法で十分伝わります。国の認定調査員テキストでも、本人と介護者から個別に聞き取る時間を設ける工夫が調査員に示されています。

認知症の親が調査のときだけしっかり受け答えします。実態は伝わらないのでしょうか。

認知症のある人では、初対面の相手の前でしっかりした受け答えをする「取り繕い」と呼ばれる反応がみられる場合があるとされています。調査の仕組み上も、当日の様子が日頃と違うと考えられる場合は日頃の状況を聞き取って評価することになっているため、家族から具体的なエピソードを頻度つきで伝えることが、実態を反映させる近道です。

実態より軽い結果が出てしまいました。調査はやり直せませんか?

やり直す道はあります。心身の状態と認定結果が合っていないと感じる場合、市区町村に区分変更申請を出して調査からやり直す方法が実務では多く使われています。まずは担当のケアマネジャーか地域包括支援センター、市区町村の介護保険窓口に相談してみてください。

参考・出典

本記事は公的機関等の公開情報をもとに作成した一般的な情報提供であり、医学的な診断・助言に代わるものではありません。 制度の内容はお住まいの自治体や時期によって異なる場合があります。最新の情報は各公式窓口でご確認ください。