介護費用の立て替えを記録するため、現金を手にノートへ書き込む手元

親の介護費用は誰が払う?親のお金・貯金から出す原則と管理のはじめ方

公開: 2026年7月22日 読了目安 約6分

先に、要点だけ

  • 親の介護費用は親の年金・貯金から払うのが原則。介護は数年から十数年続くことがあり、子の家計から払い続けると共倒れときょうだい間トラブルの火種になる
  • 親が元気なうちに、年金の振込口座・引き落とし・保険を把握し、金融機関の代理人カードや代理人指名手続きを確認する。暗証番号の共有を正式な手続きの代わりにしない
  • 立て替えたら日付・金額・用途を記録してレシートを保管し、月1回きょうだいに共有する。後の精算と相続トラブルの予防になる
  • 判断能力が低下すると口座から引き出せなくなる場合がある。全国銀行協会は2021年、医療費・介護費など本人のための支払いには柔軟に対応する考え方を示した(対応は金融機関により異なる)
  • 日常のお金の管理に不安が出たら市区町村の社会福祉協議会の日常生活自立支援事業、財産全体の管理は成年後見制度や家族信託が選択肢になる
この記事の目次
  1. 親の介護費用は誰が払う?——「親のお金から」が原則
  2. 親が元気なうちにやっておく3つのこと
  3. 立て替えたときのルール——記録・共有・早めの精算
  4. 認知症が進むと口座からお金が下ろせなくなる?
  5. お金の管理を支える制度は3段階——どの段階でどれ?

ケアマネジャーから受け取った請求書も、ドラッグストアで買った介護用品も、気づけば自分の財布から払っている——。親の介護が始まったばかりの時期は、お金の流れを整える前に支払いだけが先に来て、子の立て替えが静かに積み上がっていきます。

結論から言うと、親の介護費用は親のお金(年金・貯金)から払うのが原則です。子が自分の家計から払わないのは冷たいことではなく、介護を長く続けるための正しい組み立てです。この記事では、親のお金で払う体制のつくり方と、それを支える制度の入口を整理します。

親の介護費用は誰が払う?——「親のお金から」が原則

最初に押さえたいのは、介護費用の出どころは子の財布ではなく、親自身の年金と貯金だということです。

理由は、介護が長期戦だからです。介護は数年から十数年続くことがあり、月々の負担は要介護度が上がるにつれて増える傾向があります。子が生活費や教育費、自分の老後資金を削って払い続けると、途中で息切れして親子共倒れになりかねません。また、きょうだいのうち1人だけが自分の家計から払い続ける構図は、後々の不公平感ときょうだい間トラブルの最大の火種になります。

💡 「親のお金から」は冷たくない

自分の年金と貯金で自分の暮らしをまかなうことは、親にとっても自然なことです。子の役割はお金を出すことではなく、親のお金が介護にきちんと使える状態を整えること。ここに力を注いでください。

なお、親に貯えがほとんどなく年金も少ない場合は、組み立て方が変わります。負担を軽くする公的制度の使い方は親の介護でお金がない時の記事にまとめているので、この記事では親のお金をどう介護に使うかに絞ります。

親が元気なうちにやっておく3つのこと

親のお金で払う体制づくりは、親が元気で、本人の口から説明できるうちが一番スムーズです。やることは大きく3つです。

1つ目は、お金の全体像の把握です。年金額は年金振込通知書か、通帳の2か月ごとの入金額で確認できます。あわせて介護保険の自己負担割合(1〜3割・本人の所得で決まる)も分かると、月々の見通しが立てやすくなります。

2つ目は、本人を交えたお金の話し合いです。財産をすべて聞き出す必要はありません。「もし入院したら、どの口座から払えばいいか教えてほしい」という聞き方なら、備えの話として切り出せます。

3つ目は、金融機関の手続きの確認です。多くの金融機関には、本人が元気なうちに家族を代理人として登録する代理人カードや代理人指名の手続きがあります。名称も条件も金融機関ごとに異なるため、親の年金が振り込まれる金融機関に「家族が代わりに手続きできる制度はあるか」と聞いてみてください。暗証番号を教えてもらって子がカードを使う方法は、規約違反になったり後で使い込みを疑われたりするもとになるため、正式な手続きを優先するのが安全です。

✅ 元気なうちに確認しておくこと

  • 年金の振込先はどの金融機関のどの口座か
  • 公共料金・保険料などの引き落とし口座はどれか
  • 通帳・印鑑・保険証券の保管場所
  • 代理人カード・代理人指名手続きの有無(金融機関に確認)
  • 毎月出ていくお金の内訳(保険料・持病の医療費など)

立て替えたときのルール——記録・共有・早めの精算

体制が整う前でも、入院時の支払いや急に必要になった介護用品など、子が立て替える場面は現実に起こります。立て替え自体は悪いことではありません。大事なのは、後から精算できる形を残しておくことです。

残すものポイント
日付・金額・用途のメモノートやスマホに1行で十分(例: 7/22 紙おむつ 3,200円)
レシート・領収書月ごとに封筒へまとめて入れるだけでよい
何から払ったか誰の口座・カードから出たか分かるようにする
きょうだいへの共有月1回、合計額と内訳をLINEなどで送る

⚠️ 記録のない立て替えが一番もめる

数年後の精算や相続の場面で、記録がないと立て替えた額を証明できません。逆に、親の口座から下ろして使った分は、記録がないと使い込みを疑われる火種になります。金額の大小より、記録が残っているかどうかが分かれ目です。

誰がいくら負担するかで話がこじれそうなときは、早い段階で家族の役割分担を決めておくと安全です。決め方の手順は介護費用の兄弟分担の記事で解説しています。

認知症が進むと口座からお金が下ろせなくなる?

親のお金で払う前提が崩れる代表例が、口座の問題です。認知症などで本人の判断能力が低下すると、金融機関が本人の財産を守るために、預金の引き出しや解約といった取引に応じられなくなる場合があります。

ただし、認知症と診断されたら必ず口座が止まる、というわけではありません。全国銀行協会は2021年に、判断能力が低下した人との取引についての考え方を公表し、成年後見制度などの利用を基本としつつ、医療費や介護費など本人の利益になることが明らかな支払いについては、親族からの依頼に柔軟に対応する(病院や施設へ直接振り込むなど)という方向性を示しました。すべての金融機関に一律の対応を義務づけるものではないため、実際の対応は金融機関や状況により異なります。

もし引き出しを断られて困ったら、介護サービスや施設の請求書など、本人のための支払いだと分かる書類を持って、口座のある支店に事情を相談してください。そのうえで、長期的には次に説明する制度の利用を検討する流れになります。

お金の管理を支える制度は3段階——どの段階でどれ?

親のお金の管理を支える公的な仕組みは、本人の状態と備えるタイミングで選択肢が変わります。ここでは深掘りせず、どの段階でどれが候補になるかの見取り図だけ押さえてください。

🏦 日常生活自立支援事業

  • 判断能力に不安が出てきた段階の選択肢
  • 日々の支払いや通帳の預かりを支援
  • 窓口は市区町村の社会福祉協議会
  • 利用料は訪問1回あたり平均1,200円程度(2026年時点)

⚖️ 成年後見制度

  • 財産管理全体を法律の仕組みで守る
  • 判断能力が不十分になった後でも使える
  • 家庭裁判所が関与する
  • 相談は市区町村の窓口や地域包括支援センターへ

📜 家族信託

  • 元気なうちに結ぶ財産管理の契約
  • 託す財産や使い道を柔軟に設計できる
  • 司法書士・弁護士など専門家への相談が一般的
  • 費用は財産の内容や設計により大きく異なる

成年後見制度には2種類あり、すでに判断能力が不十分になった後に家庭裁判所が後見人などを選ぶのが法定後見、元気なうちに将来の支援者を自分で選んで公正証書で契約しておくのが任意後見です(法務省)。どれか1つだけが正解というものではなく、親の状態が今どの段階にあるか、これから何に備えたいかで組み合わせは変わります。

制度の名称や費用、手続きの細かな点は自治体や金融機関により異なります(2026年時点)。介護費用そのものを軽くする仕組みは高額介護サービス費の記事で確認できます。迷ったら、親が住む地域の地域包括支援センターか社会福祉協議会に「親のお金の管理に不安がある。今の段階で使える仕組みを知りたい」と相談するところから始めてください。

よくある質問

親の貯金を介護費用に使ってもいいのでしょうか?

親本人のための支出を親のお金でまかなうことは、後ろめたいことではなく原則どおりの使い方です。ただし本人に判断能力があるうちは本人の了解を得て使い、何にいくら使ったかの記録とレシートを残してください。記録があれば、後から他の家族に使い込みを疑われるトラブルを防げます。

認知症になると親の口座は必ず凍結されますか?

必ず止まるわけではありません。金融機関が本人の判断能力に不安があると判断した場合に、引き出しなどの取引が制限される場合があります。全国銀行協会は2021年に、医療費・介護費など本人の利益になることが明らかな支払いには柔軟に対応する考え方を示していますが、対応は金融機関や状況により異なります。困ったら口座のある支店に事情を相談してください。

代理人カードとは何ですか?誰でも作れますか?

本人の口座について、家族などの代理人用にもう1枚発行されるキャッシュカードです。原則として本人に判断能力があるうちに、本人が金融機関で手続きする必要があります。発行できる代理人の範囲や条件、名称は金融機関により異なるため、親の年金が振り込まれる金融機関に確認してください。

成年後見制度と家族信託はどちらを選べばいいですか?

備えるタイミングと目的で変わります。すでに判断能力が不十分になっている場合は、家庭裁判所が後見人などを選ぶ法定後見が基本の選択肢です。元気なうちに備えるなら、将来の支援者を自分で決めておく任意後見契約や、財産管理を家族に託す家族信託が候補になります。費用も役割も異なるため、市区町村の権利擁護の窓口や司法書士・弁護士などに相談して比べてください。

子が立て替えた介護費用は、後から親のお金で精算してもいいですか?

本人のために使ったことが分かる記録とレシートがあれば、親のお金からの精算は不自然なことではありません。ただし親の判断能力が下がった後の精算は使い込みと区別がつきにくくなります。立て替えの都度、日付・金額・用途を記録し、きょうだいにも共有したうえで早めに精算するのが安全です。

参考・出典

本記事は公的機関等の公開情報をもとに作成した一般的な情報提供であり、医学的な診断・助言に代わるものではありません。 制度の内容はお住まいの自治体や時期によって異なる場合があります。最新の情報は各公式窓口でご確認ください。